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しおのちょうじ(塩の長司) [shionochouji]

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家(いへ)に飼(かひ)たる馬(うま)を殺(ころ)して食(くひ)しより、馬(うま)の霊気(れいき)常(つね)に長次郎(ちゃうじろう)が口(くち)を出入(でいり)なすどぞ。この事(こと)はむかしよりさまざまにいひつたへり。 『繪本百物語』−桃山人夜話−
加賀国(石川県)小塩の浦に塩の長司という長者がおり、300頭もの馬を飼っていた。彼は獣肉食を好み飼っている馬が死ぬと、その肉を味噌漬けや塩漬けにして食べるのを常としていた。
ある日、役に立たなくなった老馬を打ち殺し食べたところ、その夜の夢に現れ長司の喉に食いつく。
その日から老馬を殺した時刻になると老馬の霊が現れ長司の口から入り込み腹の中を暴れ回るようになる。
この苦しみは六時間にも及よび、長司は苦痛に耐えかね自分の悪事やあらゆる暴言を吐きつづけた。
医術や祈祷など試したけれど一向に治る気配はなく、百日ほど経ったころ遂に馬が重荷を背負うような姿で死んでしまったと云う。

これは、長司が妖怪と言うのではなく馬憑きの怪現象の話。
この時代、獣肉を食べるのは悪食とされ、人の労を助ける馬や牛を食べるのは、とんでもないことだったのかもしれない。

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